開催にむけてご挨拶
本年度の日本産業衛生学会近畿地方会総会・学術講演会は、現地開催にて実施いたします。今年度の学術講演会のテーマは「いま求められる産業保健の知識」です。
学術講演会では、①職域における熱中症対策、②有害業務関係として皮膚吸収性有害物質の管理、③企業におけるハラスメント問題対策、の3つのテーマを取り上げ、それぞれの専門家をお招きし、ご講演いただきます。日々の産業保健活動において即実践に活かせる内容となることを期待し、学術講演会担当幹事の先生方を中心に企画いたしました。
特別講演の概要
特別講演1:「安衛則改正に伴う職場の熱中症対策」
演者:堀江 正知 先生(産業医科大学 産業保健管理学 教授)
近年、地球温暖化の影響により夏季の気温上昇が顕著となっており、すべての働く人々の健康にとって重大な課題となっています。特に暑熱環境下での作業に従事する労働者にとって、熱中症は生命に関わるリスクであり、職場における予防対策の強化が産業保健上の急務です。本講演では、この「熱中症対策」について、現場で求められる産業保健の視点からご講演いただく予定です。また、令和7年6月1日施行予定の「労働安全衛生規則の一部改正」に関する最新情報についてもご紹介いただき、事業者に求められる対応や今後の方向性を確認する機会となることが期待されます。
特別講演2:「皮膚吸収性有害物質の性質やその衛生管理等について」
演者:豊岡 達士 先生(独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 (湘南地区) 有害性試験研究領域 開発グループ)
職場における化学物質の管理は、産業保健の基本的かつ重要な課題の一つであり、その中でも「皮膚吸収性有害物質」への対応は、見落とされがちでありながら深刻な健康影響を引き起こす可能性があります。最近、皮膚吸収性有害物質に関する法改正が行われ、産業保健の専門職として、これらの物質に関する正しい理解と適切な管理方法を身につけることは不可欠です。本講演では、皮膚吸収性有害物質への基本的なお話から、企業における対策についてまでご講演頂く予定です。現場での対応力を高め、化学物質による健康リスクの低減を目指す上で、非常に有意義な内容となることが期待されます。
特別講演3:「企業におけるハラスメント対策」
演者:田中 健吾 先生(大阪経済大学 経営学部 教授)
近年、職場におけるハラスメント問題は、労働者のメンタルヘルスや職場環境全体に深刻な影響を与えるものとして、産業保健の現場でも大きな関心が寄せられています。安心して働くことのできる職場づくりを支えるためには、的確な認識と予防・対応策の整備が求められています。本講演では、ハラスメントに関する社会的な動向やその背景を踏まえ、産業保健の立場から参考となるお話をいただく予定です。職場の健全な環境づくりを考えるうえで、有意義な内容となることが期待されます。
開催体制について
今回の学術講演会は、大阪府医師会との共催として実施いたします。これまで長年にわたり、この学術講演会の運営は、大阪公立大学大学院医学研究科産業医学教室が事務局を担ってまいりましたが、人的資源の確保が難しい状況です。また、日本の産業保健への貢献と運営上、長年、本講演会は日本医師会の認定産業医研修会を兼ねることで運営してきました。
こうした状況を踏まえ、大阪府医師会と協議を重ねた結果、主に認定産業医関連の運営事務を大阪府医師会が担い、講演内容と講師の選定(学会員への対応も含めて)を近畿地方会が担当するという協力体制で開催する運びとなりました。
そのため、本講演会は今年度より「第73回日本産業衛生学会学術講演会・第1回大阪府医師会産業保健学術講演会」として開催となります。
会員の皆様の積極的なご参加を心よりお待ちしております。
日本産業衛生学会 近畿地方会
会長 林 朝茂(大阪公立大学大学院医学研究科)